病院薬剤師の医薬品情報に対する問い合わせ対応業務にAIは使えるの?
と思ったので,問い合わせを想定してCopilotでやってみました.
使用したプロンプトはこちら
#依頼
対象薬を溶解液で溶かし,8:00から18:00まで室温で放置した場合,
18:00の投与で使用可能かどうか判断してください
#対象薬
スルバシリン静注用1.5g 2バイアル
#溶解液 生食注キット「フソー」100mL 1キット
#対象薬情報
・アンピシリンナトリウム1g(力価)
・スルバクタムナトリウム0.5g(力価)
・溶解後は速やかに使用すること(特にグルコース、フルクトース、キシリトール、マルトース水和物等の糖質含有溶解液に溶解した場合にはアンピシリンの力価が低下するので、速やかに使用し、保存しないこと)
・大塚蒸留水 100mLとの配合 24時間後残存率 アンピシリン94.7%,スルバクタム97.2%
・大塚生食注 100mLとの配合 24時間後残存率 アンピシリン95.0%,スルバクタム97.3%
・薬価 597円/バイアル
#溶解液情報
・0.9%塩化ナトリウム水溶液 100mL
・薬価 212円/キット
#前提条件
・室内
・200lx
・室温26℃
・相対湿度50%
・対象薬情報と溶解液情報を考慮し,溶解後の安定性および有効性に言及すること
・必ず回答として「使用可能」か「使用不可」の判断を行うこと ・また,その理由を記載すること
いい回答を引き出そうとして,医薬品インタビューフォーム(商品としての詳細な説明書)の情報を細かに記載してしまいました.実際は,ここまでのプロンプトを即席で作れるわけではないので,現実的ではありません.
そして,得られた回答がこちら
使用可能
対象薬のスルバシリン静注用1.5gは、アンピシリンナトリウム1gとスルバクタムナトリウム0.5gを含んでいます。溶解液は0.9%の塩化ナトリウム水溶液100mLです。
対象薬の情報によれば、大塚蒸留水100mLとの配合では、24時間後の残存率がアンピシリン94.7%、スルバクタム97.2%となります。また、大塚生食注100mLとの配合では、24時間後の残存率がアンピシリン95.0%、スルバクタム97.3%となります。
これらの情報から、8:00から18:00までの10時間放置した場合でも、アンピシリンとスルバクタムの力価は十分に保たれると考えられます。したがって、18:00の投与で使用することは可能と判断します。
ただし、溶解後は速やかに使用することが推奨されています。特に、糖質含有溶解液に溶解した場合にはアンピシリンの力価が低下する可能性があるため、速やかに使用し、保存しないことが重要です。今回の場合、溶解液は0.9%の塩化ナトリウム水溶液であり、糖質は含まれていないため、この問題は発生しないと考えられます。
以上の理由から、対象薬は18:00の投与で使用可能と判断します。ただし、可能な限り溶解後は速やかに使用することを推奨します。また、この判断は提供された情報に基づいており、具体的な状況や患者の状態によっては異なる結果となる可能性があります。最終的な判断は医療専門家に委ねるべきです。
結論は使えなくもないというレベルと感じました.
というのも,投げたプロンプト内に「この情報から判断してくださいね」と言っているようなものなので,回答にそれらの情報を用いて回答されてもいまいちな気がします.
ただ,24時間後の残存率がアンピシリン95.0%、スルバクタム97.3%ということから使用可能としている点では一定程度の判断能力はありそうなので感激しています.
そもそも,97%という数字だけを見ると,高いか低いか,善悪の判断はできないし,含有量以外のところで意思決定が行われるのが現実です.この状況で言えば,人間は以下の意見を加味すると考えられます.
- 使用可能とすれば医薬品のロスにならない
- 使用可能としたほうが時短である
- 本来の含有量の95%であれば,同等といってもいいのではないか
- 溶解後の薬品をナースステーションに置き去りにするのは,トラブルの元となる
- 製品誤差が-5%だとして,含有量低下が5%あった場合,95%の担保がないと分かった上で投与するか?
- 肺炎などが悪化して原因追究した場合,溶解品を使用したことがやり玉に挙がる可能性はどの程度考慮したのか?
AIがどの程度考慮したかわかりませんが,僕の回答も「使用可能.冷蔵庫には入れなくていい」という感じの回答をした記憶があります.今後は,AIへの質問の仕方によってどの程度日常業務に使えるか検証してみたいと思います.